セックスの経験人数で大きな格差が生まれる「セックス格差」が広まっている

これまでに性行為をした経験がないという人もいれば、複数人と性行為を経験したことがあるという人もいます。そんな「何人と肉体関係を持ったことがあるか?」について調査を実施したところ、これまで誰とも肉体関係を持ったことがない人が増えている一方で、経験人数の多い層はますます多くの人と性行為を行うようになってきていることが明らかになっています。
Sexual loneliness: A neglected public health problem?
https://www.researchgate.net/publication/367325876_Sexual_loneliness_A_neglected_public_health_problem
2020年にアメリカ医師会雑誌(JAMA)に掲載された論文では、2000~2002年の3年間と、2016~2018年の3年間という2つの期間に、18~24歳の男女に対して「何人と性行為を経験したことがあるか?」(経験人数)が調査されています。調査によると、2016~2018年の3年間に「過去1年間一度も性行為を行っていない」と回答した男性の割合が増加しているそうです。
別の研究では、18歳から44歳までの成人に対して性的活動と性的パートナーの数を尋ねる調査が行われています。この調査によると、アメリカの異性愛者の上位20%は経験人数が「12人」になると回答しており、上位5%に至っては経験人数が「38人」になると明かしたそうです。
これら2つの調査結果を踏まえ、「アメリカの異性愛者である男性の経験人数が大きく歪められていることがわかる」とデンマーク・オーフス大学のヨーナ・レネセン氏は指摘しています。

レネセン氏は社会における所得の不平等さを測定する指標であるジニ係数を使い、男女の生涯にわたる経験人数の偏りについて調べたところ、これは「富の分配と同じくらい不平等」であることが明らかになっています。
世界で最も不平等な国のひとつである南アフリカの2014年時点のジニ係数は「0.63」で、同じく大きな経済的格差が国民間に存在するナミビアの2015年時点でのジニ係数は「0.59」です。なお、ジニ係数は数値が0に近ければ所得格差が小さく、1に近づけば格差が大きくなっていることを示します。
これに対して、レネセン氏が性行為格差をジニ係数を用いて調査したところ、独身男性のジニ係数は「0.60」で、独身女性のジニ係数は「0.58」となっていることが明らかになりました。つまり、男女どちらも性行為を多数経験する「性行為富者」と、全く経験しない「性行為貧者」の二極化が進んでいるというわけです。

活発な性生活が人間のメンタルに好影響をもたらすことが過去の研究により明らかになっているため、性行為格差により多くの人が負の感情的影響を経験することになるとレネセン氏は指摘。さらに、性行為を経験できない男女が増えることで、自尊心や前向きな気持ちを育てる機会が少なくなり、性的な孤独が怒りや攻撃性を引き起こす可能性も指摘しています。加えて、性犯罪者や連続殺人犯、テロリスト、大量殺人犯なども性的欲求不満を抱くケースが多いと報告されているとのこと。
性行為格差が広がっているのはアメリカだけでなく、多くの国で若い男性の性的孤独が増加しているともレネセン氏は指摘しています。フィンランドでもパートナーを見つけることに苦労している男性の数が1992年から2015年にかけて倍増しているという調査報告が存在するそうです。一方で、「性行為を望む男性の割合」自体はむしろ増加傾向にあるそうで、現代社会ではこれらを解決する方法が求められています。
性的孤独を和らげるためのひとつの方法としてレネセン氏が挙げたのが、オンライン上で気に入った相手同士でデートを行う「オンラインデートアプリ」です。一方で、Tinderのようなマッチングアプリについては「視覚的に左右されがちであり、拒否されると特に傷つきます」「失敗すると悲しみと不安が増します」と述べ、リスクが伴うと指摘しています。
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